機関車の吹き出す蒸気の中に、陽炎の様に見え隠れする姿。
長い髪をなびかせて、次第に近づいてくるその姿。蒸気の中に浮かぶ顔。
メーテルであった。
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鉄郎 |
「メーテルぅ!」 |
メーテル |
「鉄郎・・・」 |
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やっと巡り会ったメーテルに、鉄郎はこみ上げる想いを言葉にすることが出来なかった。
二人はただ、じっとお互いの目を見つめ合った。
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ボォ・・・・・
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999は、ラーメタルを後にした。
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メーテル |
「元気だった?」 |
鉄郎 |
「メーテル、これ・・・」 |
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私はメーテル。鉄郎、999に乗りなさい・・・
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メーテル |
「どこでも良いわ。あなたの好きなところで999を降りなさい。」 |
鉄郎 |
「ええっ?」 |
メーテル |
「あなたさえその気なら、無理に機関車に頼んでどこかの惑星に・・・」 |
鉄郎 |
「メーテル!?」 |
(ミャウダー) |
(だって、今プロメシュームと呼ばれているのはメーテルだもんな。なんだ、知らないのか?メーテルはプロメシュームの跡を継いだって話だぜ) |
メーテル |
「どうかしたの?鉄郎?」 |
鉄郎 |
「・・・えっ?・・・い、いや・・・」 |
車掌 |
「えぇ、次の停車駅は惑星モザイク。停車時間は2時間16分30秒でございます。」 |
鉄郎 |
「惑星モザイク?」 |
車掌 |
「アンドロメダ大星雲の入口にある小さな惑星です、はい。」 |
鉄郎 |
「アンドロメダ・・・そんな遠くまで行くのか・・・」 |
車掌 |
「はぁ。・・・いやあの、機関車さんがそう言っているもんですから。・・・あ、それでは・・・」 |
鉄郎 |
「メーテル」 |
メーテル |
「鉄郎。今度999が停まる惑星モザイクが最後の機会よ。そこを過ぎたら二度と引き返せないわ。決してね。私、一緒に惑星モザイクで降りてもいい。あなたさえ良ければ、どこかの惑星で死ぬまで一緒に暮らしてもいい・・・ね、鉄郎・・・。」 |
鉄郎 |
「何故だ!?メッセージカードで僕を呼びだしておきながら、今度は列車を降りろと言う。・・・今度の旅は分からないことだらけだ!」 |
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顔を曇らせ立ち去るメーテル。
それを見送る様にして、影のようにメタルメナが入ってきた。
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メタルメナ |
「999から降りないんですってね。」 |
鉄郎 |
「・・・ああ」 |
メタルメナ |
「怖くないの?これから行く先でどんな目に遭うか分からないのに。」 |
鉄郎 |
「ああ、怖いさ。でも今ここで逃げ出したら、死んでいった仲間に申し訳ないからね。」 |
メタルメナ |
「死んでも良いの?」 |
鉄郎 |
「死ぬもんか!必ず生き抜いて地球に帰るんだ!」 |
メタルメナ |
「不可能よ、そんなこと。」 |
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メーテル |
「メタルメナさんとおっしゃったわね。あなた、おいくつ?鉄郎は若いわ。若者はね、負けることは考えないものよ。一度や二度しくじっても、最後は勝つと信じている・・・それが本当の若者よ。昔はそんな若者が大勢いたわ。」 |
メタルメナ |
「メーテルさん、あなた、随分、大勢の若者を知ってらっしゃる様ね。」 |
メーテル |
「ええ。私は時の流れを旅する女。今までに数え切れないくらい大勢の若者と旅をしてきたわ。共に悲しんで、共に喜んで、そして、死に別れてきたの。私は、一緒に旅した若者達のことを決して忘れない!一人一人の思い出を、この胸に刻み込んでいくわ。・・・永遠に。」 |
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(爆発音) |
鉄郎 |
「うわぁ!何だ!?999が何かにぶつかったのか!? |
黒騎士ファウスト |
「聞け!999とその乗客よ。私は銀河鉄道を支配する黒騎士ファウストだ。直ちにコントロールセンターへ向かえ。」 |
車掌 |
「だぁ〜!えらいこっちゃ〜!えらいこっちゃ〜!機関車さん、どうします?」 |
機関車 |
「要求ニハ従エマセン。時間ガ遅レマス。」 |
黒騎士ファウスト |
「今この鉄道を支配しているのは私だ!銀河鉄道管理局ではない。大人しく命令に従え。さもなくば999、お前を破壊する!!」 |
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鉄郎 |
「う〜わ〜危ない!くっ」 |
機関車 |
「私ハ、機関車Cノ62ノ48。良心ニ背クコトハ出来ナイ・・・出来ナイ」 |
メーテル |
「機関車さん、言うことを聞きなさい!」 |
鉄郎 |
「メーテル」 |
メーテル |
「他に方法は無いわ。」 |
機関車 |
「シカシ・・・シカシ・・・分カリマシタ・・・残念デス。」 |
車掌 |
「グズッ・・・残念です、あたしも・・・」 |
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999は、宇宙に浮かぶ巨大な要塞のようなコントロールセンターに停車した。
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黒騎士ファウスト |
「メーテル、鉄郎、降りろ。乗務員は降りる必要はない。」 |
車掌 |
「で・・・で、でも、あたしには乗客を守る義務が・・・」 |
黒騎士ファウスト |
「その必要は無い!!」 |
車掌 |
「は・・・はい。」 |
黒騎士ファウスト |
「二人とも表示に従って歩け!」 |
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黒騎士の声に促されて、薄暗い大広間へと足を踏み入れると・・・
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鉄郎 |
「あっ!プロメシューム!」 |
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正面に巨大なプロメシュームの顔のレリーフが浮かびあがっていた。
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黒騎士ファウスト |
「プロメシューム様こそ、真に偉大な宇宙の女王。その命は永遠に不滅だ。」 |
鉄郎 |
「馬鹿言え!プロメシュームは確かに死んだんだ!そうだろ、メーテル?」 |
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(黒騎士ファウスト登場) |
鉄郎 |
「現れたな!?貴様が黒騎士ファウストか!でかけりゃいいってもんじゃないぞ!」 |
黒騎士ファウスト |
「鉄郎・・・」 |
鉄郎 |
「何だよ?何で俺をそんなに見つめるんだ!やめろよこの野郎!」 |
黒騎士ファウスト |
「シュワッ!」 |
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(過去に落とされる鉄郎) |
鉄郎 |
「うわ〜っ!!」 |
メーテル |
「鉄郎!ファウスト、鉄郎をどうするつもりなのです?」 |
黒騎士ファウスト |
「ご心配なく。しばらくの間、過去の時間へと旅をさせてやるだけです。」 |
メーテル |
「・・・過去へ?」 |
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鉄郎 |
「ああ・・・どうなっちゃったんだ・・・?どこだろうここは・・・」 |
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鉄郎 |
「・・・ん?誰かいる。・・・お〜い、おい待ってくれよぉ!」 |
鉄郎 |
「・・・母さん!それに俺だ!・・・そうか、思い出したぞ。これは母さんが殺される前の日の晩だ!!」 |