| 012 鉄郎の謎-2 |
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−鉄郎、空白の2年間−
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| 鉄郎は、劇場版『銀河鉄道999』(1979年公開)から劇場版『さよなら銀河鉄道999』(1981年公開)までの2年間をどのように過ごしていたのだろうか? |
| 劇場版『さよなら銀河鉄道999』のりんたろう監督は、鉄郎の2年間の空白について次のように語っている。 |
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さて、この映画、いきなりパルチザンとして機械化兵と闘う鉄郎というショッキングなシーンからはじまる。女王プロメシュームを倒してもなお、戦いつづける鉄郎。パルチザンに加わるまで、そして加わってからの2年間、鉄郎はどのように生きてきたのだろう。
監督のりんたろう氏に聞いてみると「作品のなかでは、鉄郎の2年間の生活にはふれていません。というのはストーリーの展開上、直接関わっていない部分でもあるし、もっと別の部分に重きを置くべきだと判断したからです」という答えから返ってきた。それでは、2年間というのは単なる空白だったのだろうか。「そうではないでしょう。やはり、前回からの主人公の成長は当然あると思う。その成長過程は、冒頭の鉄郎が闘う姿から汲み取ってもらえると思います。見る側の想像にまかせたい。それにメーテルとの再会という問題も、やはりある程度の期間を置かなければ不自然ですし……。とにかく前回の旅立ちよりも、鉄郎がひと回りも大きくなっていることはたしかです」。
(『アニメージュ』1981年6月号、徳間書店) |
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つまり、空白の2年間は想像するしかないのだろうか。
だが、劇場版『さよなら銀河鉄道999』の脚本家である山浦弘靖がノベライズ化した中に鉄郎の空白の2年間が描かれていたのである。 |
かつて、鉄郎がメーテルと別れたあと、真っ先に駈けつけたのも、この懐かしいスラムであった。
「お帰り、鉄郎」
「おかえりなさい、鉄郎兄ちゃん」
スラムの住民達は、涙を浮かべて鉄郎を迎えてくれた。
彼等が傍にいてくれたからこそ、鉄郎は、メーテルと別れた哀しみに耐えてこれたのだ。
ところが、鉄郎がスラムに戻って半年もたたないうちに、騒ぎが持ち上がった。
『機械化人間以外ノ者ハ、直チニ、メガロポリス市カラ立チ退クベシ』
こんな内容の布告が、市当局よりスラムの住民に言い渡されたのだ。
「今迄はスラムの存在を黙認していた市当局が、なぜ、今になって立ち退き要求を突きつけて来たんだ」
「その理由を明らかにしてくれ」
スラムの住民代表は、市長に会見して問い質した。だが、市長の回答はきわめて曖昧だった。
「上からの指令です」
「上?上とは誰だ?メガロポリスで一番権限を持っているのは、市長、あんたじゃないのか?」
鋭い住民代表の追求にもかかわらず、市長は「上からの指令」をくり返すだけだった。
「こんな回答では我々は納得出来ない!」
「第一、 立ち退こうにも我々に行くあてがないんだ!」
「スラムは俺達の故郷だ。誰の手にも渡さんぞ!」
誠意のない市当局に対して、住民の怒りは爆発した。そして、一致団結すると、立ち退き要求の撤回を市当局に申し入れたのだ。
その回答は―銃弾だった。
いつの間にか動員された機械化兵士の大軍団が、何の警告もなしに、いきなり攻撃を加えて来たのだ。その作戦行動は血も涙もない残忍そのものだった。スラムを完全包囲したあと、四方八方から一斉に攻撃を加えて建物を一軒残らず破壊する。そして、逃げまどう住民達を、片っ端から射撃する。女子供、老若男女の区別はない、文字通りの虐殺(ジェノサイド)である。だが、ある一定の人数分の住民だけは殺されずに捕虜となり、いずこへともなく連れ去られていった。
こうした野蛮な機械化人間によるジェノサイド作戦に対し、生き残った人々は銃を手に取ってゲリラ戦を挑んだ。鉄郎もその一員に加わった。
パルチザンの抵抗は激しくメガロポリス全体に広がっていった。今や、ビル一つ一つが激しい戦場となったのだ。一階を味方が占拠すれば、二階から上を敵が占拠する、そんな戦いが毎日のように続くうちに、メガロポリスは廃墟と化し、メガロポリス自慢の気温調節スクリーンも破壊された。
緒戦は勇猛果敢に戦ったパルチザン側も、戦いが長びくにつれて損害が増え、武器弾薬も次第に不足しがちになった。これに対し、機械化兵士側は、やられてもやられても、新手の軍団を大量に投入、パルチザン側を圧倒していった。
『全世界の仲間達へ
我等の戦いに連帯を!
熱烈なる支援を!』
パルチザン首脳部は、救援の無電を全世界に飛ばした。
だが、回答はどこも同じだった。
『目下、我等も機械化人と戦闘中、苦戦を強いられている。残念ながら救援不可能。同士の健闘と勝利を祈る』
鉄郎達は知った。機械化人間はメガロポリスのスラムだけに攻撃を加えて来たのではない。地球上のすべての人間に対して、いや、それどころか、全宇宙の命ある者達にも残虐な戦争を仕掛けて来たのだ。
今や、銀河系を問わず、宇宙のあちこちで大地を血と火で赤く染める壮絶な戦いが繰り広げられている。
しかし……と鉄郎は思う。
機械帝国は、そのシンボルともいえる女王プロメシュームを喪ったはずだ。その死は、鉄郎がハッキリとその目で確認している。
それなのに、なぜ、こんな大戦争を仕掛ける力を持っているのだろうか。
誰か、プロメシュームにかわる新しい女王でも誕生したのであろうか。
しかし、プロメシュームのあとを継ぐ者はメーテルしか居ない。
「あのメーテルに限って……そんな馬鹿なことってあるもんか」
鉄郎は、自分の途方もない想像に思わず苦笑してしまう。
メーテルにとってプロメシュームは自分を生んでくれた母親、かけがえのない存在……その母親を心を鬼にして倒したメーテル。そのメーテルが、プロメシュームのあとを継ぐはずがない。
〈では、一体、誰が……〉
「やめた、頭がこんがらかるだけだ」
それ以上は考えないことにして、銃を手に取る鉄郎であった。
ところでメーテルの消息だが、あの日、メガロポリスのホームで別れて以来、まったくといっていい程、分かっていない。
〈昔の体に戻るために、冥王星へ行ったのか……〉
そうだとすると、鉄郎がどこかでメーテルと出会っても気がつかないだろう。なぜなら、メーテルの昔の姿を鉄郎は知らないのだから。
そういえば、別れの時にメーテルはこう言った。
「いつか私が帰ってきても、あなたは私に気がつかないでしょう……」
メーテルは、やっぱり、鉄郎の想い出の中を旅する女なのだ。
想い出といえば、メーテルと並んで超特急999のことも永久に忘れることは出来ないだろう。
……銀河の星の海を、一条の光となって驀進し続けた999。昔の蒸気機関車C62とそっくり同じの車体。そして、正体不明のおかしな車掌さん。
なにもかもが懐かしい。
だが、その999もメーテルを乗せてメガロポリス駅を出発したあと、二度と戻ってはこなかった。
もし、戻ってきたのなら、いの一番にホームに駈けつけて、メーテルのことを車掌さんに尋ねよう……そう思って、夜毎、空を見上げる鉄郎だった。
しかし、戦火が激しくなるにつれて銀河鉄道の運行は途切れがちになった。かつては、一日に数十本もの惑星間列車が発着したメガロポリス・ステーションも砲撃を浴びて破壊され、遂に今では一本の列車も動かなくなっている。
それと並行して、鉄郎の999への思いも次第に記憶の片隅へ追いやられていった。
いや、メーテルの面影でさえそうだった。死と背中合わせの激しい戦いの中を生きる鉄郎には、甘美な追想にふける気持ちの余裕など無くなっていた。
―殺るか、殺られるか。
カサカサに乾ききった鉄郎の心には、もはや、敵を一人でも多く殺すことしか思い浮かばなかった。
(ソノラマ文庫『さよなら銀河鉄道999 (1)』朝日ソノラマ、1981年、34〜40頁) |
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| やはり、『鉄郎の謎-1』のレポートでもそうだったように、鉄郎の空白の部分というのは、メガロポリスのスラムが一つのキーになっているようである。 |
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MRI
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013 全ては計画-1
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