| 003 メーテルの正体-2 |
|
−鉄郎の母の生き写しとは?メーテルは機械化人間?生身の人間?−
|
| |
鉄郎 「あったかいなア……メーテルが機械だなんて……」。
メーテル 「私の体は鉄郎のお母さんの体……」。
鉄郎 「……!?」
メーテル 「私は鉄郎のお母さんの若い時の姿の生き写し……私は人の姿をした影」。
鉄郎 「それで母さんに似てたのか」。
メーテル 「こうやってもらった体が年をとれば、また一つ別の体を写しかえて……」。
メーテル 「果てしない時間の中を旅してきたの……」。 |
|
|
これは、劇場版『銀河鉄道999』の中で、メーテルが鉄郎に自分の正体を告白する場面である。鉄郎はメーテルが機械化人間ではないかと困惑していたが、メーテルの言葉に納得したようだ。
しかし、鉄郎のお母さんの若い時の姿の生き写しとは、どういうことなのか?メーテルの言葉だけでは、メーテルが機械化人間なのか、生身の人間なのかわからない。
松本零士は、劇場版『銀河鉄道999』構成メモ1でメーテルのことを次のように記している。 |
「永遠に死ねない者の悲しみを背負って生きている宇宙最高の機械化体をもった悲劇の女。」
(『アニメ画集 銀河鉄道999 PART7 週間少年キング夏休み大増刊9月15日号』少年画報社、1979年、32頁) |
|
宇宙最高の機械化体というからには、メーテルは機械化人間ということになる。
しかし、構成メモ4の段階に進むと、メモの中でメーテルは鉄郎に次のように言っている。 |
「私はあなたのお母さんの若い時の体をうつしたの……機械でなく生きた体を……あなたのお母さんそのもの……心のほかはあなたのお母さんの若い時、そのもの……」
(『銀河鉄道999設定資料集 週刊少年キング増刊10月28日号』少年画報社、1979年、83頁) |
|
ここで注目すべきことは、メーテルが自分が機械であることを否定している点である。
つまり、映画の中では
「若い時の姿の生き写し」と曖昧だった言葉が、「若い時の体をうつしたの……機械でなく生きた体を」
とより具体的に表現されているのだ。
しかし、メーテルはどうやって機械でなく生きた体で、鉄郎のお母さんの若い時の体を写したのだろうか?この答えは、構成メモからさらに進んだ段階のシナリオ準備稿を使用した小説版に載っていた。小説の中でメーテルは鉄郎に次のように言っている。 |
気がつくと、メーテルは鉄郎の手に自分の手を重ねていた。
「え?」
「あたたかいでしょ。」
「これでも私を、機械化人だと思う。」
正面から聞かれて、鉄郎も困った。
「だって……女王がそういったじゃないか。」
「人工という意味ではね……でも、私のこの体は、正真正銘あなたのお母さんなのよ。」
「え、え?」
鉄郎はきょとんとした。
「だって、母さんをモデルにしただけなんだろ。」
「そうじゃないわ。」
メーテルは、首をふった。
「機械文明を信奉した母は、自分の体を機械にとりかえた……でも私は、どうしてもいやだとがんばったの。
それに、母は私に部品狩りの使命を与えるつもりだった。
『機械化人になったら警戒されて、ふつうの人間と親しくなれない。』
そういったら、納得してくれたわ。
でも母は、娘の私が年老いて、みにくくなるのをとてもきらった。
それで、私にふさわしい美しい女の人を捜させたの……白羽の矢が立ったのは、あなたのお母さん……あなたが生まれて間もなくでした。」
鉄郎は、息をのんで聞いていた。メーテルと自分の母が、そんなむかしに接触があったなんて!
「私は、お金とひきかえに、あなたのお母さんから生きている細胞をわけてもらったの。
お母さんは、あなたという赤ちゃんを生んでとても生活に困っていらしたのよ。
細胞はメーテル星に送られ、最新の設備のもとに培養が進められました……それがいまの私の体。」
「クローン人間……だね。」
鉄郎は、聞きかじりのことばを口にした。
クローンマン……その技術は、すでに二十世紀においてさえ、成功を報じられたことがあるくらいだ。
「白紙同然の心に、もとの私の性格や知識、記憶を移植して、私という人間ができたのよ。だから……。」
鉄郎の手をにぎるメーテルの手に、力がこもった。
「心のほかは、あなたのお母さんの若いときそのものなの……人工ではあっても、機械化人間とはちがうつもりよ。」
鉄郎はうなずいた。
(『小説 銀河鉄道999 ジュニア版 後編』少年画報社、1979年、169〜173頁) |
|
| つまり、メーテルとはクローン人間なのだろうか? その前にまず、クローン人間とは何なのか?文部科学省のサイトには次のように載っている。 |
クローンという言葉の語源は、ギリシャ語で「K l on =小枝」ですが、現在で は「遺伝的に同一である個体や細胞(の集合)」を指す生物学の用語として使われています。クローン羊やクローン牛とは、お互いに全く同じ遺伝子組成を持
った複数の羊や牛を指します。
哺乳類のクローンを生み出す方法は、受精後発生初期(精子と卵子が受精した受精卵が、その後細胞分裂を続けていく初期の段階)の細胞を使う方法と皮膚や筋肉など成体の体細胞を使う方法の二つに大別されます。
受精後発生初期(胚)の細胞を使う方法では、まず受精後、細胞分裂した細胞の中から1細胞を分離します。次にその細胞と核を除去した未受精卵とを、電気刺激を与えて細胞融合させ(核移植)、培養により細胞分裂を誘発させた後、子宮に戻します。
胚の細胞が両方の親から受け継ぐ遺伝子は偶然に左右されるため、新しく産生される個体の遺伝子の組み合わせを知ることはできません。しかし、一つの受精卵から発生した胚の細胞の遺伝子はすべて同じであり、これらの細胞を使って産生された個体同士はすべて同じ遺伝子を持つクローンとなります。ただし、現在のところ細胞分裂が進んだ胚はクローンの産生に適さないため、産生できるクローンの数には制限があります。
これに対して、成体の体細胞を使用する方法では、理論上新しく産生される個体が持つ遺伝子の構成は元の体細胞の遺伝子とほとんど同一になります。また、使用できる体細胞の数には限りがないため、理論上、クローンを無限に産生することができると考えられます。
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kagaku/klon98/) |
|
メーテルの体は、小説の内容からすると後者の成体の体細胞を使用する方法のクローンと言えるだろう。
劇場版『銀河鉄道999』制作途中の雑誌主催の座談会において、高見義雄プロデューサーは、 |
「今、メーテルがクローン人間じゃないかとか、鉄郎のお母さんとはどんな関係なのだろうかとか、いろいろファンの方から電話で問い合わせがあるんですが、でも今まで正解に近い答えをいってきた人はいませんから。ファンの皆様にいろいろ推理を働かせていただくと面白いんだけど、たぶん、なかなかわからないと思いますよ」。
(『アニメ画集 銀河鉄道999 PART4 週間少年キング陽春大増刊4月22日号』少年画報社、1979年、77〜78頁) |
|
と語っている。
この発言はメーテルがクローン人間であることを否定していると、解釈することもできる。
しかし、鉄郎の母のクローン人間にメーテルの意識を移植しているのだから、正確にはクローン人間ではないと言えるだろう。また、雑誌『アニメージュ』のコラムにおいて、まにあ小黒はメーテルの体について次のような表現をしている。 |
「しかも、メーテルのからだは、亡き母のからだの若いころの生きうつしなのだ。この生きうつしとは具体的にはなんだかわからないが、きっとクローン技術かなにかで作った複製のからだに精神をうつしかえたのにちがいない」
(『アニメージュ』1989年12月号、徳間書店、106頁) |
|
「クローン技術かなにかで作った複製のからだ」というのは、上手い表現であると思われる。
さらに、クローン人間に別の人間の意識を移植する技術的なことについては、テレビ版『銀河鉄道999』第14話「二重惑星のラーラ」及び原作版『銀河鉄道999』第5巻「二重惑星のラーラ(続)」(少年画報社)において、女医ラーラが999号に乗るために鉄郎の体と自分の体を取り替えるために使用した機械の存在などから、可能な技術と推定される。
つまり、メーテルとは、鉄郎の母(星野加奈江)の若いクローンで作った複製の体にメーテルの意識を移植した「生身の人間」ということになるのである。
そして、劇場版『銀河鉄道999』公開から1年後、ついにメーテルが機械化人間か?生身の人間か?松本零士本人が雑誌『アニメージュ』のインタビューに次のように答えたのである。 |
AM 「『999』の話がでたところで81年春公開予定のパート2についておうかがいしたいんですが!?」
松本 「ちょっと早すぎますね、まだ(笑)。もっとも、この『ヤマト』と同じようなメモは、すでにスタッフに渡してある。メモの公開ですか!?かんべんしてください(笑)。ただこれだけはいえる。前回を前編とするなら、今回は後編です」。
AM 「しかし、メーテルの正体はわかってしまったのでは!?」
松本 「だから、メーテルは“人間”ですよ。けど、彼女の前と後、つまり、過去と先行きはまだ描いていない。そういう意味じゃ、今回の『999』は、その先行きを描くわけだから、その前後をカバーするもう1本の『999』が必要です。じつをいうと、その物語もすでにアニメ作品として始動しています」。
(『アニメージュ』1980年7月号、徳間書店、42頁) |
|
やはり、メーテルは生身の人間だったのだ。
さらに、その1年後の1981年8月1日、全国東映洋画系において劇場版『さよなら銀河鉄道999』が公開された。
この映画の中に登場するサイレントの魔女は、機械エネルギーに対して吸引力が作用するブラックホールである。だから、999号に乗っていた機械化人間のメタルメナには吸引力が作用してしまった。
メタルメナは、999号を助けるためにサイレントの魔女に身を投げてしまう。そして、後に残ったメーテルには、サイレンの魔女は反応しなかったのである。
つまり、劇場版『さよなら銀河鉄道999』によって公式にメーテルが生身の人間であることが明らかになったのである。
ところが、メーテルが機械化人間ということも実は間違いではなかったのである!? |
| |
|
MRI
|
| |
|
004 メーテルの正体-3
|